ビリージョエルのストレンジャー以来、僕は音楽をアルバム単位で聴くようになった。気に入ったシングル盤があったら、シングルレコードを買わずに必ずアルバムを買うことにしていて、その癖はいまも変わらない。アルバムにはシングル発売に向かない名曲がたくさん入っているし、シングルと同じ頃に録音したものが揃っているわけだから、他の曲も気に入ることが多い。そんな曲たちを聴かずにヒット曲だけを追うのはあまりにもったいないと思うのだ。
このサイトに紹介されているアルバムにはラジオがきっかけだったものが多いが、エルトンジョンとの出会いもやはりラジオだった。当時シングル発売されていた「I
GUESS THAT'S WHY THEY CALL IT THE BLEUS(ブルースはお好き?)」をラジオで聴いた僕はすぐにエルトンが好きになり、やはり当時の最新アルバムだった「TOO
LOW FOR ZERO」を買った。そしていつものお決まりで、彼の足跡をたどる旅がはじまる。
当時すでに20種類近くあったエルトンのアルバムを一度に買うわけにもいかず、まずはレンタルレコード店で前作の「Jump Up!」やその前の「The
Fox」を借りてみた。
しかしどうもしっくりこない。1曲1曲はいい作品だし何が気に入らないのかはわからないけど、何となく好きになれないのだ。
そこで僕は新しい順に聴くのをやめて、数あるエルトンのアルバムからジャケットの気に入ったものを選んで買うことにした。("ジャケットが気に入ったアルバムにハズレなし"というのが僕の持論で、実際に今までほとんど失敗はないのだ。この方法なら、曲もアーティストも知らないアルバムさえ自分で選ぶことができる。)
「"DON'T SHOOT ME" I'M ONLY THE PIANO PLAYER」
「GOODBYE YELLOW BRICK ROAD」
「CAPTAIN FANTASTIC AND THE BROWN DIRT COWBOY」
僕はこの3枚(のジャケット)を選んだ。そしてそれは正解だった。
実はこれらはいずれもエルトンが一番売れていた時期のアルバムで、ちょっと詳しい人に聴いたら、きっと同じアルバムを奨めてくれただろう。(やはり僕のジャケット選択法は間違っていなかった!)
その後は、有名な「YOUR SONG」を収めた「ELTON JOHN」や、ジョージマイケルもカバーしていた「DON'T LET THE SUN
GO DOWN ON ME」を収めた「CARIBOU」(超オススメ!)などを次々と聴きあさる。 どれも僕を別世界に連れていってくれるアルバムだった。
前にビリージョエルのアルバムを映画のようだと書いたけど、エルトンジョンのアルバムはどちらかというと絵本に近い。色鮮やかでさまざまなタッチのイラストとファンタジックなストーリーで綴られていて、ページをめくるたびにワクワクと胸が躍る。そこに感じられるのはある種子供じみた繊細で純粋な心だ。
こうしてすっかりエルトン・フリークになり、古いアルバムを聴いていくうちに、最初に感じた違和感の理由がやっとわかってきた。
絵本のストーリー、つまり詞を書いているのは実はエルトンではなかったのだ。数々の傑作を生みだした作詞家バーニートーピンとは1976年以降コンビを解消しており、7年ぶりに全曲を2人で作ったアルバムが「TOO
LOW FOR ZERO」だった。昔の絵本と比べるとずいぶん大人の雰囲気ではあるけれど、ちゃんと同じ匂いを持っている。前作、前々作にはないキラキラしたものがそこにはある。
バーニーが書くのは、歌詞というよりはポエムだ。彼の詩はほとんど空想や思い出やひとりごとやラブレターみたいなもので、エルトン以外のミュージシャンが曲をつけるのはたぶん簡単なことではないだろうし、決していい曲に仕上がるとは限らないと思う。でもエルトンの曲にはやはりバーニーの詞でなくてはならないのだ。そこが、コンビという魔法の不思議なところであり、曲づくりの奥深いところなのだろう。
最近、エルトンジョンとはずいぶんご無沙汰だけど、新しいアルバムはどうなんだろう。相変わらずバーニーとの黄金コンビは続いているようだし、たまには新作も聴いてみようかな。
【2002.4.20】
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