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SING OR DIE

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SING OR DIE 〜opening theme〜
愛するこころ
あはは
PEACE!
ケロケロ
たんぽぽの堤防
そんなの愛じゃない
誘惑
MARRY ME?
よろこびのうた
そうだよ 〜album mix〜
月光

© TOSHIBA EMI LIMITED
 

 いい音楽を作るためには音楽を作る力と演奏する力が必要だ(という話は誰にでも理解できると思う)。 
 しかし僕たちが普段聴いているプロの音楽はそれだけでは完成しない。彼らは音楽を作り演奏するのと同じぐらいに(人によってはそれ以上に?)楽器と機材選びに力を入れている。どの楽器で演奏するかということは、聴く側の人間が思っている以上に音楽を作る上でとても重要な要素なのだ。たとえばドラムスのシンバル1枚、ギターの弦1本に至るまで、彼らは自分が出したい音を出せる楽器を僕たちが想像できないほど真剣に探している。
 しかし選ぶことができない楽器がひとつだけある。それは"ヴォーカル"だ。はじめから最高の楽器を手に入れていなければ、一生手に入れることができない特別な楽器。それが"ヴォーカル"なのだ。

 ドリームズカムトゥルーの吉田美和は、そんな特別な楽器を持っている数少ないミュージシャンのひとりだ。「LIFE/小沢健二」の項に書いたとおり、僕は相当ヴォーカルにうるさい方だと思っていたのだけど、彼女がデビューした時は腰を抜かすほど驚いた。日本にこれだけストレートでヌケのいい声を持っている人は他にいない。いつか海外のミュージシャンに負けないヴォーカリストになるに違いないと、ずっと期待し続けてきた。

 残念ながらドリカムの曲は僕の嗜好にぴったりはまるというわけにはいかなかった。(もちろんどれもすばらしい楽曲なのだけど、)あまりにも女の子の気持ちをテーマにしたものが多すぎたし、アレンジも僕には機械的すぎた。それでも隠れドリカムファンとして、美和ちゃんの声聴きたさに何枚かアルバムを買ったりはしていたのだけど。

 それから長い年月を経て、ドリカムが僕の求めていたアルバムを出してくれたのは1997年、デビューから9年目のことだった。タイトルは「SING OR DIE」。それまでアルバムのタイトルはずっと、LoveとかKissとかStarとかMagicといった美しいイメージの単語で構成されてきたのだけど、今度のアルバムは"歌うか死ぬか"、極端な言い方をすれば"歌うことこそ生きることだ!"という極めてソウルフルなタイトルだ。僕の食指がピピピと動いた。

 いきなり波と鼓動の音にのせてどこかの民族音楽風の歌声が響きわたり、「愛するこころ」がはじまる。"大地の愛"を思わせる広がりのある曲と詞。この曲を含めて相変わらずラブソングのオンパレードなのだけど、今までとはどこか違っている。どの曲にも、女の子じゃなくても共感できる普遍のテーマが込められていて、アルバム全体に深い大きな愛が漂っている。(「そんなの愛じゃない」だけは共感できないのだけど・・・。)
 アレンジもいい。デビッドTウォーカーをはじめアメリカの大御所たちが織りなすぶ厚い音とリズムに支えられて、吉田美和のヴォーカルが最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。彼女のヴォーカルを生かすのは、こういう音なのだ。歌うことが本当に楽しくて幸せでたまらないという気持ちがあふれている。まるで水を得た魚のようだ。(実はこのアルバムの前に、アメリカのスタッフで作った「beauty and* harmony」というソロアルバムがあるのだが、バックの音が立ちすぎていてヴォーカルを聴くにはイマイチである。)

 その後「MONSTER」「monkey girl odyssey」と2枚のオリジナルアルバムが出たけど、「SING OR DIE」を超えるパフォーマンスはちょっと無理みたいだ。このところテレビで見る美和ちゃんは、英語のレッスンがたたってか、それとも年齢のせいなのか、当時のようなヌケのいい声があまり聴けなくなった。
 アレサフランクリンやダイアナロスを見ていると、女性歌手にとって年齢は大敵なのだなあとつくづく思うけど、彼女にはこれからももっともっと自分の声を高めていってほしい。間違っても黒人歌手の真似をしたりして、世界にひとつしかない宝の楽器をなくしてしまうようなことだけはしないでほしいと心から願っている。(きっと大丈夫だよね。)

【2002.4.11】

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