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ALFIE

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ALFIE
MORE THAN A DREAM
A HOUSE IS NOT A HOME
HOW CAN YOU BELIEVE
MEDLEY :
NEVER MY LOVE
ASK THE LONELY
RUBY
WHICH WAY THE WIND
BYE BYE WORLD
GRAZING IN THE GRASS

© Motown Record Corporation
 

 たった一度しか聴いたことがない、とてもきれいな曲があった。それはたぶんFMラジオで聴いたのだと思う。曲名はわからなかったけど、やさしくて美しいハーモニカのインストルメンタル。
 特徴的な音の響きが印象に残っていたので、"
きっとスティービーワンダーに違いない"と思っていた。レコード店へ行くたびに気になってスティービーワンダーのコーナーを覗いてみるのだけど、曲名がわからないし、そもそもスティービーの曲かどうかも定かではないので探しようがない。歌ものならレコード店のスタッフに説明して曲を特定できそうだけど、インストルメンタルはこんな時に困る。店員に鼻唄をきかせられるほど、曲を覚えてもいなかったし。

 ずっとその曲が気になったまま数ヶ月を過ごした。
 そしてチャンスはもう一度やってきた。ラジオでスティービーワンダーの特集を見つけたのだ。注意深く聴いていると(大当たり!)やはりその曲が流れた。タイトルは「アルフィー」。最初に聴いた時の印象そのままに、何とも言えないピュアなハーモニカの音が広がる。
 すぐにレコード店へ行くが、どこへ行っても「アルフィー」を収録したアルバムは見つからない。探しに探してようやく見つけたのが、「LOOKING BACK」というタイトルのベスト盤だった。
 ちゃんとMotownレコードから出されたものだったけど、いい加減なデザインのジャケットで3枚組の廉価輸入盤。「アルフィー」が入っていなければ手は出さない代物だ。でも中身はスティービーの曲が入っているのだし、ぜいたくを言ってはいけない、何しろ「アルフィー」を好きな時に聴くことができるようになるのだから、とそのアルバムを買って帰ることにした。

 それからは好きな時に「アルフィー」を聴くことができるようになったし、特にオリジナルアルバムを探すこともなかった。しかし探しものはたいていの場合、忘れた頃に見つかるものだ。何年か経って中古レコード店でいつものように物色をしていると、おかしなレコードに出会った。
 ジャケットの右上に「HOW DO YOU SPELL STEVIE WONDER BACKWARDS?」と書かれたそのアルバムこそ、僕の探していた「アルフィー」のオリジナル盤だった。アルバムタイトルは「EIVETS REDNOW」。「STEVIE WONDER」の文字を逆に並べた「イーベッツ・レッドナウ」というアーティスト名で出された、謎のインストルメンタルアルバムだったのだ。
 このアルバムは1968年に18歳のスティービーワンダーが発表したもので、どうしてこんな凝った出し方をしたのかはわからない。日本で「ALFIE」というタイトルで発売されたのは1987年になってからだ。僕が探していたのはそれより前だったから、見つからなかったのも無理はない。

 内容は期待通りに素晴らしく、「ALFIE」の他にもスティービーの感動的なハーモニカテクニックと瑞々しいフィーリングをたっぷりと楽しむことができる。こんなアルバムを18歳の少年がつくることができるというのは相当な驚きだったけど、繰り返し聴いてみると、そのピュアなサウンドは18歳だからこそつくることができたのだという気もする。
 まだ若くてスリムだったスティービーが、例のでかいハーモニカ(スーパークロモニカという魔法のハーモニカ)をくわえて、首を振りながら気持ちよさそうに演奏する姿が目に浮かぶ。遠い昔に持っていたピュアな気持ちが少しだけよみがえってくる。こんなに温かくて微笑ましい気持ちでこの曲を聴けるのは、僕が歳を重ねたせいだろうか。それはうれしいことのようにも、寂しいことのようにも感じる。

【2002.4.7】

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