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FRESH

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IN TIME
IF YOU WANT ME TO STAY
LET ME HAVE IT ALL
THANKFUL 'N' THOUGHTFUL
SKIN I'M IN
I DON'T KNOW (SATISFACTION)
KEEP ON DANCIN'
QUE SERA, SERA (WHATEVER WILL BE, WILL BE)
IF IT WERE LEFT UP TO ME
BABIES MAKIN' BABIES

© Sony Music Entertainment,Inc.

 ファンク(FUNK!)と呼ばれる音楽がある。
 紋切り型に言えば、R&Bから派生し、16ビートとシンコペーションによる跳ねるようなリズムを持った黒人音楽というところだろうか。1960年代から70年代に隆盛を極め、以降の様々なジャンルの音楽に影響を与えた。最近のジャパニーズポップスにもファンクの要素を取り入れたものは多い。

 19歳にはじめて出会ったビートルズからオールディーズ、ブルース、R&Bへと移行した僕の音楽志向は、やがて当たり前のようにファンクミュージックへとたどり着くのだが、この音楽は、それまで聞いてきた黒人音楽とは明らかに違う匂いを放っていた。

 "うさん臭さ"


 スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「FAMILY AFFAIR」という曲に出会ったとき、僕は聴いてはいけないものを聴いてしまったような感覚に襲われた。それは確かに黒人音楽だったしR&Bなのだけれど、そこにあったのはピュアな魂の泉ではなく、複雑に調合された麻薬だった。
 僕がそれまで知っていたブルースやR&Bといった黒人音楽は、彼らが持って生まれた感性とか生命力みたいなものから湧き出たものだ。そしてその純度の高い"魂(ソウル)"の結晶こそが、僕が黒人音楽を愛する理由だったのだ。でもこの曲は違う。明らかに違う種類の音楽だ。
 繰り返される単調なリズム。冷めたヴォーカル。いわゆる"サビ"というものは存在しない。淡々とはじまり淡々と終わっていく3分間の音の波に棲む"
うさん臭いもの"が、僕の耳から体の中へじわじわと注入されていく。

 「FAMILY AFFAIR」を含む12種類の麻薬を詰め込んだアルバム「THERE'S A RIOT GOIN' ON」は、それまでの黒人音楽はもちろんのこと、スライ自身の音楽にも見られなかった実験的で内省的なものだった。ドラムとベース、ピアノ、ギター、ヴォーカル、コーラス、それらが互いの音のすき間を埋めながら生み出すうねりは、決して熱を帯びることなく低い温度を保ちながら絡み合っていく。その冷めたグルーブには、世界中の人々に感動を与えるプラスの力ではなく、ある種の人々だけを極度の中毒に陥れるマイナスの力が潜んでいた。

 僕はいとも簡単に麻薬の虜になった。ジェームズ・ブラウン、Pファンクといったファンクの巨匠たちもまた、それぞれの魔法で人々を虜にしたが、僕にとってスライは特別だった。これほど深く、妖しく、なまめかしいサウンドは、スライ以外には作り得なかった。

 スライはその後何枚かのアルバムを作ったが、「THERE'S A RIOT GOIN' ON」を超える魔法は、残念ながら生み出せなかった。ただし1曲だけ、彼の最も濃厚な麻薬を収めたアルバムが別にある。
 アルバムタイトルは「FRESH」。有名な映画の主題歌「QUE SERA, SERA」のカバー曲がアルバムの後半に登場するのだが、
原曲のイメージがここまで残っていないカバーソングを僕はかつて一度も聴いたことがない。そしてこんなにも濃厚な麻薬の匂いを嗅いだことも。

 「THERE'S A RIOT GOIN' ON」から2年を経て出されたこのアルバムは、どこか作りかけで放り出したような印象があり、スライの作品としては決して完成度が高いとは言えない。しかし前作とはまた違う種類のクールさがそこにはある。より深くトリップさせてくれるという意味では、あるいはこのアルバムがスライの集大成であり、No.1なのかもしれない。

【2002.3.1】

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