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STRANGER

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MOVIN' OUT(ANTHONY'S SONG)
THE STRANGER
JUST THE WAY YOU ARE
SCENES FROM AN ITALIAN RESTAURANT
VIENNA
ONLY THE GOOD DIE YOUNG
SHE'S ALWAYS A WOMAN
GET IT RIGHT THE FIRST TIME
EVERYBODY HAS A DREAM

© Sony Music Entertainment,Inc.

 フォークソングとニューミュージックしか知らなかった高校2年生の僕。ラジオから流れてきたのは、それまで一度も体験したことのないソウルフルでメロディアスな英語の歌だった。

 『We met as soul mates on Parris Island.....』

 美しさと切なさに満ちあふれた声とピアノ。そしてヘリコプターの羽音。一章節ごとに鼓動が高まり、僕の体中の神経はすべてラジオに集中していた。

 「ビリージョエルって知ってる?」
 数日後、音楽に詳しい友人に尋ねると、彼は1枚のアルバムを薦めてくれた。それはラジオで特集されていた最新作ではなく、その5年前に発表されていた名作『THE STRANGER』だった。(しかも彼の一番好きなアルバムは『52ND STREET』だったらしい。なぜ?)

 期待とちょっとした不安---ショーウィンドウの服に惹かれて入った店で、店員の見立てた別の服を試着する時みたいな緊張感---とともに、レコードに針を下ろす。すごい、すごい、すごい、こんな世界があったなんて!
 有名な「THE STRANGER」や「JUST THE WAY YOU ARE」といった曲よりも、むしろ「SCENES FROM AN ITALIAN RESTAURANT」からエンディングに向かって押し寄せる、何ともいえないノスタルジックな匂いが心の奥の方に語りかけてくる。ピアノと歌声とそれを包む楽器の音の波に、僕は夢中で耳を澄ませた。それはまるで1本の長い映画を見ているようだった。美しく切ないコーラスがフェイドアウトして、映画の終わりを告げる口笛が流れたとき、僕のまわりにある現実はすべて遠い昔のものになっていた。僕にとって音楽はそれまでとは全く別のものに変わったのだ。

 僕はそんな風にビリージョエルと出会った。いまも、そしてこれからも僕が一番愛するアルバムはたぶん変わらないだろうと思う。
 もちろんそれからいろんな音楽に出会ったし、いろんなアルバムと過ごしたけれど、誰だって初恋の相手が近くにい続けてくれるならその人を忘れたりはしないだろう。(何しろ音楽は裏切らないしね。)

 アルバムの中にはいくつもの曲がある。それぞれが違うメロディとリズムを持っていて、いろいろな楽器がそれを演奏しているのに、目に見えないひとつの色の空気がずっと体中をつつんでいてくれる。僕が好きになるのは、いつもそんなアルバムだ。
 「THE STRANGER」は、僕にそんな音楽の愛し方を教えてくれた先生であり、生涯の憧れの人なのだ。友人がどうしてそのアルバムを薦めたのかはいまだにわからないのだけど。

【2002.2.27】

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