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PCI用のビデオカードの開発もぱったりと途絶え、OS9もCEOに葬られ、そろそろG2Macも終演かと思われた今年9月に、Sonnet社からPCI Mac用のG4カードCrescendo/PCI-G4/800MHzが新発売された。G2Macユーザーと関連サイトはにわかに活気を取り戻し、僕自身も試してみたいことしきりだったが、明らかに当初設定したPM7300強化予算を上回る価格で、すぐに手を出すわけにはいかない。仕方なく、あちこちでアップグレードやクロックアップの話題が盛り上がるのを指をくわえて見ているしかなかった。
予算を上回るとはいうものの800MHzで5万円前後という価格は破格で、アップグレードカードを販売している他のメーカーも一斉に既存製品の価格を下げることになった。僕が半年前に26000円で購入したPowerLogix社PowerForce G4 450などは当時市販価格51800円だったが、現時点ですでに27800円まで下がってしまった(T_T)。

当然、オークションの相場も急落した。ある日某オークションでG4カードを物色していると、数ヶ月前には平気で5万円以上につり上がっていたMADMAX-G4PCI576がとんでもなく低い入札価格に落ち着いている。「800MHzは無理でもこれなら手が出るじゃないか」と、またも中途半端な型落ち安物買いの本領発揮。見事に落札してしまった。この点に関してだけは全くもって学習能力がないようだ。
折しもHG4-PM350を入手し495MHzにクロックアップして、Mobyさんのチキチキベンチマークレースに参加した直後。実に間の悪い買い物ではあったが、とにかくまたPM7300がワンランクアップグレードである。1GHzオーバーがあたりまえのこの時代にいまさら販売終了した576MHzカードのインプレというのも何だが、買ってしまったものは仕方がないので、とりあえずひと通りまとめておこうと思う。


箱   実をいうとこの商品を落札した段階で僕がMADMAX-G4PCI576について知っていたのは、秋葉館のオリジナル商品だということ、中身がメルコ製だということ、動作クロックが576MHzだということぐらいで、どういう商品なのかはほとんどわかっていなかった。ネット検索をしてみても、このカードについての詳細や写真が載ったページはひとつも見つからなかったのだ(つまり現時点で、MADMAX-G4PCI576についての詳しい記事を掲載しているのは唯一このサイトだけだと思われる)。

出品者とのやりとりを終えやがて手元に届いた箱には、アメリカのB級映画を思い起こさせるマッチョなイメージのオートバイがあしらわれていた。どんなカードかとワクワクしながらフタを開く。添付のマニュアルやらSystem InfoのCD-ROMやらを取り出して中をのぞくと、そこには予想だにしないものが入っていた。
MADMAX

・・・ちょっと詳しい人ならひとめでわかるに違いない。HG4N-PM550にクロックアップキットPK-PM366OCを取り付けたものである。なんだ、そういうこと? 秋葉館さんが、当時最高スペックだったメルコのG4/550カードをクロックアップして、さらにハイグレードの商品を作ったというわけだ。
よく見るとこのクロックアップキットは基盤上のレギュレータにぶつかっているが、おかまいなくムリヤリ斜めに取り付けてある。こんなところからも、計画的に開発された商品ではなく、ただの既存パーツの組み合わせに過ぎないということがうかがえる。

  横アングル

問題なく動作することを確認したら、次にやることは決まっている。何しろ最初からクロックアップキットがついており、0.1MHz刻みでバスクロックの変更ができるのだ。クロックアップを試してみない手はない。ただしこのカード、すでに550MHzを576MHzにクロックアップしたものなので、余裕はあまりないかもしれないというのが気になるところではある。目標はとりあえず600MHz。これをクリアすれば、800MHzとそんなには違わないような錯覚に陥ることもできそうだ(笑)。

PK-OM366OC   メルコPK-PM366OC。 3つのスイッチでバスクロックの値を設定する。スイッチは写真右から順に10の位、1の位、小数点第一位用。これは48.0MHzに設定された状態である。
テストには実際にこのカードを使う僕のメイン機PM7300を使用。環境も通常通りRADEON、AEC-6280+IBM IC35LO40AVVA07+PIONEER DVD-105S、Century USB CARD、128MB 60nsEDOメモリx4枚をセット状態。メモリインタリーブも効かせたまま実行である。ドライバはいつもの通りXLR8 MACh Speed Control 2.6.1を使用。スイッチを50.0MHzに設定してOS9.1を起動すると、あっけなく成功した。おお!さすがメルコ。調子に乗って51MHz×12=612MHzに挑戦したがこれはNG。結局起動が確認できたのは50.5MHz×12=606MHzまでだった。

テストは筐体を開いたまま行っていたのだが、起動途中でフリーズするマシンの中をふとのぞくと、起動時に明るく輝いていた緑色の光が弱々しく消えていく様子が目に入った。AEC-6280Mの基盤上にあるアクセスランプである。なるほど、PCIの電源が足りていないということか。「もうだめだ、HDDまで届かない・・・」という感じでむなしく消えていく光を見ながら、僕はこのマシンの電源の弱さを改めて痛感した。
PCIスロットを空にしてメモリも1枚だけにしてSCSIディスクから起動してやればもう少しいけるのかもしれない。しかしメイン機のPM7300をバラすわけにもいかず、テストはいったん終了。続きはPM9500に任せることにした。

このときPM9500はというと、たまたまメモリインタリーブON状態で放置されていた。クロックアップの上限を知るためには、メモリインタリーブはOFFにしなくてはいけないのだが、このマシンはメモリ着脱のためにCPUとPCIカード、ケーブル関係をぜんぶはずさなくてはならない。少し悩んだ結果、面倒なのでそのままテストを実施することにした。
起動ディスクは内蔵SCSIドライブ、PCIスロットはVoodoo4のみで、OSは9.1、ドライバはXLR8 2.6.1である。まずは600MHz・・・クリア。次に606MHz・・・クリア。次に51MHz×12=612MHz・・・これもクリア! 予想通りである。しかし残念ながらそれ以上は無理だった。

さらにSystem Infoのベンチをとろうとしたのだが、やはり612MHzでは起動するのが精一杯らしく、計測途中で不正終了してしまう。また徐々にクロックを下げて、結局ベンチをとることができたのは606/242MHzだった。実用的には不安定で使い物にならないが、1758という数字はいままで見たベンチとしてはダントツ、もちろん僕のとったベンチとしては史上最高値である。チキチキベンチマークレースに間に合わなかったのは、実に残念である。

systeminfo

クロックアップの上限はおよそ見当がついたので、今度はまたPM7300に戻す。次は常用可能なCPUクロックの上限確認である。とりあえず600MHzオーバーは達成したものの、実用的にどうかということになると話は別なのだ。
過剰なクロックアップによってOS9.1上で使えなくなるのが、Internet Explorer、Outlook Expressあたりである。やたら不正終了して使い物にならないため、徐々にクロックを下げていく。バスクロック49MHzまで落としてもまだ安定しない。さらに下げる・・・。結局どうにか安定して使えそうになったのは元の576/288MHzだった(笑)。
さらにOS10.2で起動するとこれでもFinderが落ちたりするため、今度は2次キャッシュの動作クロックを下げていく・・・。1/2.5設定でもダメ・・・1/3設定の576/192MHzでようやく実用レベルになった。おいおい、これじゃクロックダウンじゃないか。

以降は576/192MHzでOS10.2を使い続けてきたのだが、実は最近になってクロックアップの上限を左右する要素をひとつ発見した。 Quartz Extremeである。Quartz ExtremeはOS10.2で新たに追加された機能で、平たく言うと、いままでCPUにやらせていたグラフィック処理をビデオカードに任せることでCPUに別の仕事をさせようというもの。本来はPCIビデオカードに対応していないのだが、システムファイルの書き換えで無理矢理有効にする方法を試してみたところ、クロックアップ耐性が向上したのだ。
前述の"Finderが落ちる"という症状は、Dockやコンテクストメニュー、ブラウザのお気に入りメニューなどを使っているときに、マウスの移動にメニューの表示がついていけなくなって玉砕するという感じで起きていたのだが、580MHzオーバーで頻発していたこの症状が、Qartz Extremeを有効にしてから出なくなったのである。

なんと598MHzでも平気で動作するのでしばらく調子に乗って使っていたのだが、ある日作業途中に突然画面がブラックアウトしてしまった。ビデオカードへの負荷が原因なのかどうかは定かではないが、初めての経験だったので少し怖くなってクロックダウンすることにした。現在はクロックを下げて49.0×12=588MHz、2次キャッシュは1/2.5の235MHzで常用しているが、めったに不正終了が起きることもなく順調である。
Xbench 1.0によるベンチ結果は以下の通り。G4/800DP(QuickSilver)に比べて36%という数値は、PM6100/60と比べていたSystem Infoの1000%オーバーと比べると切ないばかりだが、PM7300をベースにした趣味のマシンとしてはなかなかではないかと思う。

xbench

購入からすでに4ヶ月が過ぎ、Sonnet社からは800MHzの他に700MHzのG4カード(現在4万円弱)が、PowerLogix社からは800MHzのG3カード(現在299ドル)が発売されている。掲示板にいただいたSonnet G4/800のXbenchスコアを見るかぎり、MADMAXはこれに遠く及ばず、仮にオークションなどで見つけたとしてもよほど安価でないかぎりは、800MHz、700MHzのカードを買った方がよいだろう。

あれ?また最後に否定して終わるパターンだ。最近の買い物はどうもこの傾向にあるような気がする。ただ自分としては別に後悔しているわけではないのだ。はんだごてを使わずにクロックアップが楽しめるこのカードは、本来の目的とは別の意味で(笑)なかなか面白い商品ではあると思う。 今回は手をつけなかったが、基盤上にはさらにコア電圧とCPUクロック倍率を変更するディップスイッチもある。HG4N-PM550ユーザーの方から45.8MHz×13=595MHzで起動に成功したという情報もいただいているので、そのうち試してみたい気も(ちょっとだけ)している。

【2003.3.4】

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