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LIVE!

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TRENCHTOWN ROCK
BURNIN' & LOOTIN'
THEM BELLY FULL
LIVELY UP YOURSELF
NO WOMAN, NO CRY
I SHOT THE SHERIFF
GET UP, STAND UP

© ISLAND RECORDS LTD.
 
 

 ブレイクダウンのライヴに通った「OPEN HOUSE」には、実はもうひとつお気に入りのバンドがあった。名前をちゃんと思い出せないのだけど、メインヴォーカルはRyujiさんという体の大きな人だった(Ryuji Band、だったかな?)。
 基本的にはレゲエバンドだったと思うのだけど、僕にはブルースにきこえた。そのバンドのコンセプトが"レゲエ的ブルース"や"ブルース的レゲエ"だったのか、それともRyujiさんの声やOPEN HOUSEのな雰囲気がそう感じさせたのか、残念ながら当時の僕にはそれを分析するだけの音楽的素養はなかった。
 彼らが決まって演奏してくれたのは、レゲエ風にアレンジしたジョンレノンの「JEALOUS GUY」、そしてボブマーリーの「NO WOMAN, NO CRY」だった。

 この曲を聴こうとレンタルレコード店で借りてきた「NATTI DREAD」は、僕に2つのショックを与えた。ひとつは、そこに収められた音楽が想像していたよりずっと激しくて重いものだったこと。もうひとつは、逆に「NO WOMAN, NO CRY」だけがRyujiさんのとは似ても似つかない軽いノリだったことだ。

 「NATTI DREAD」を含む初期のボブマーリーは、そのほとんどがラスタ信仰にもとづいた戦いをテーマにした、いわゆるプロテスタント・ソングで構成されている。レゲエのリズムと反体制的な内容は世界中の人々に受け入れられたのだけど、その頃の僕にはこのアルバムに込められたメッセージとリアリティを理解することができなかった。
 普通ならその時点でやめてしまうところだが、ボブマーリーのネームバリューが僕を押しとどめた。"よくないはずはない"というよくわからない固定観念に支えられて何枚かのアルバムを聴くうちに、ようやく出会ったのが「LIVE!」だった。

 ロンドンで行われたライヴを収録した「LIVE!」は、やはりプロテスタント・ソング満載のアルバムには違いないのだけど、スタジオ録音盤にはない圧倒的なエネルギーに満ちあふれていた。ライヴならではのパワーに加えて、不思議な空気が会場を包んでいる。まるで宗教儀式のようなのだ。ラスタを叫び続ける彼にあわせて、歌い、盛り上がる聴衆たち。中でも「NO WOMAN, NO CRY」のコーラスは何度聴いても鳥肌が立つ。

"Everything's gonna be alright"
"Everything's gonna be alright"
"Everything's gonna be alright"
"Everything's gonna be alright"
・・・・

 大丈夫だよ、すべてうまくいくから・・・。
 捕まり死んでいく友人たちと嘆き悲しむ女性に歌いかける、優しく、空しく、美しい言葉が繰り返される。合唱がこだまする会場。これがボブマーリーだ。 Ryujiさんたちがカバーしたのは間違いなくこの曲だと思った。僕はようやくボブマーリーの魅力を体感し、さらにこの後お気に入りになる後期のアルバムにも出会っていったのだ。

 その後しばらくしてOPEN HOUSEが店を閉めた。Ryujiさんの歌も聴けなくなってしまったけど、数年前、仕事関係の送別会で偶然Ryujiさんに会った。
 飲んで騒ぐ僕たちの前にギターを持って現れたその店の主人が、弾き語りを始めた。心地いい音楽を聴きながらますます酔っぱらった同僚たちが、失礼にも"こいつに歌わせてよ"と僕を前に押し出した。僕に向かって、店の主人は"「NO WOMAN, NO CRY」っていう歌を知ってる?"ときいたのだ。
 彼と並んで椅子に腰掛け、「NO WOMAN, NO CRY」を歌っているうちに、懐かしいOPEN HOUSEの光景が頭に浮かんできた。歌い終わって"なかなかよかったよ"と言われたところで、ようやく気がついた。Ryujiさんだ。
 あとは同僚と同じくすでに泥酔状態だった僕の昔話をさんざん聞いてもらい、"また来ますね"と言ってその店を後にしたのに、仕事が忙しくなって行きそびれて、もう何年も経ってしまった。
 まだあの店はあるのかな。もう一度行って、約束やぶったこと謝らなくちゃ。

【2002.7.8】

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