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PIONEER MPC-LX100 は、LC630と同等の68040ロジックボードを積んだMac互換機である。
すでにPerforma5210などのPowerPCが登場していたにもかかわらず、貧乏性の僕は、型落ちで値引き率の高いこのマシンを選んだのだ。(後にG3が登場してすぐ7300を買うという同じ過ちを繰り返すことになる。)

クロック周波数33MHz、メモリ12MB、HDD500MB。TVチューナーとAV入力用のボードが標準で装備されされており、Avid Videoshopがバンドルされていた。このスペックでノンリニア編集など今では考えられないことだが、当時は大まじめにAV編集のためのマシンと位置づけられていたのだ。

そして何より特徴的なのは、やたらと音質のいい内蔵ステレオスピーカーと、スピーカー保護ネットを含む前面パネルのラウンドデザインだ。ボリューム調整ダイヤルの他にブースト調整ダイヤルまでついており、おそらくMac史上で最も音にこだわった製品であろう。
LX100

卓越した音とデザインを持つ
PIONEER MPC LX-100。
これはCD-ROMドライブ交換後の写真だが、
オリジナルはCD-ROMドライブの前面も
ラウンドデザインになっている。

この音のよさとデザイン、そしてその希少さに惹かれた僕は、ロジックボードとHDD、CD-ROMをPowerMac 6300/120のパーツと入れ替えて使用してきた。LX100のロジックボードはLC630と共通デザインなので、6300のロジックボードが挿入可能なのだ。

しかしそのPPC603e/120というスペックも時代の流れとともに実用とはほど遠いものとなり、もはやこれまでかとあきらめかけていた頃、とあるサイトに出会った。「It's a tiny story of "PIONEER MPC"」と題されたそのサイトには、LX100の上位機種であるLX200をG3化するまでの経緯が詳細に記されていた。

LX100をG3にすることができる・・・。
7300/G3を持っている僕にとって、LX100のG3化は実用的にあまり意味のないことだったのだが、このマシンがG3になるという事実を黙って見過ごすことなどできない。さっそく改造に踏み切ったのだった。


LX100をG3にするための第1歩は、Alchemy化である。
Performa54xx、64xxに搭載された603eのロジックボード(通称"Alchemy")用に、Sonnet社などからG3カードが供給されているため、それ以前のマシンについては、ロジックボードをAlchemyに変えることでG3化が可能になるわけだ。
さらにハイスペックなG3をめざす場合は、5500に搭載されたロジックボード"gazelle"を使用しなければならないが、これを入手するためにはAlchemyの倍近く費用がかかるため、今回はAlchemyを使用することにした。

ここでひとつ大きな問題にぶちあたる。
AlchemyはLX100とデザインは共通であるものの、LX100にはない3.3Vの電源を使用しているらしい。LX100で動作させるためには、3.3Vの電源を新たに追加しなくてはならないのだ。

3.3V電源の製作方法については、前述の「It's a tiny story of "PIONEER MPC"」にわかりやすく解説されていた。使われていない5Vの端子を利用して3.3Vを生成する方法だ。 同じ方法をとったPCI Boosterという市販のアダプターもあるのだが、9,800円という価格はいくら何でも高すぎる。
僕は迷わず、このサイトをバイブルに、中学の技術の授業以来20年以上さわったことのなかったはんだゴテを使っての自作アダプター製作の道を選んだ。

まずは大須(秋葉原には数も種類も足下にも及ばない名古屋最大の電気街)に部品購入に出かける。ICや基盤などもちろん買ったことがないが、確か第2アメ横ビルにパーツ屋さんがいくつかあったはずだ。
しかし悲しいかな店の数と品揃えが圧倒的に少ないため、最も重要な部品が手に入らない。 5Vの電圧を3.3Vに変換する三端子レギュレータ「LT1585CT- 3.3」を扱っている店が1件も見つからないのだ。(秋葉原の千石電商で通販購入できることはわかっていたが、1200円の部品に1000円の送料がかかるという馬鹿馬鹿しさに、二の足を踏んでいた。)

代わりに3.3V化ができそうな「安定化電源キット」というものを見つけた。LM338Tという可変の三端子レギュレータを使ったキットで、基盤、抵抗、コンデンサなどすべて入れて700円のお得なパッケージ商品だ。店のおにいさんには「たぶん無理だと思うよ」と言われたが、それはそれでよしとしよう。はんだゴテの練習ぐらいにはなるだろうと、とりあえず購入した。
説明書

安定化電源キットの説明書。
この説明書とともに下記がパッケージされている。
・LM338T
・シリコン整流用ダイオード(10D-1)
・金属皮膜抵抗(200Ω、750Ω、1.5kΩ、2kΩ)
・半固定抵抗(1kΩ)
・電解コンデンサ(1000〜3300μF 35V、10μF 35V)
・積層セラミック(0.1μF)
・基盤(AE-350)
名古屋では大須の第2アメ横にあるタケイムセンで入手可能。

その他必要なヒートシンクや絶縁シート、はんだゴテなどを購入して家に戻ると、いよいよ製作である。

このキットの出力電圧は1.25〜20V、出力電流は5Aと書いてある。必要なのは3.3V、2.5Aなので、必要な仕様は一応クリアしている。
前述の通り、はんだゴテをさわるのは中学以来で電気的知識に至っては皆無に等しく、 同封された回路図を見てもチンプンカンプンだ。
回路図 僕にはチンプンカンプンの回路図。
左側の電源トランス回路には「別途ご用意いただく部分」と書かれているが、AC電源は使用しないのでここは無視することにした。
幸い基盤と部品の図が書かれていたので、何も考えずにその通りにはんだ付けをしていった。
基盤図 この図のおかげでかろうじて 作業を進めることができた。

はんだが多すぎたり少なすぎたりと悪戦苦闘しながら、何とかはんだ付けを完了したが、素人目に見てもINとOUTが電気的につながっておらず、テスターをあてても反応はない。
テスターは少し前にホームセンターでたたき売りしていたのをとりあえず買っておいたもので、まさかこんなすぐに役立つとは思っていなかった。使うのはもちろんはじめてである。

説明書を読み返すと、必要な電圧にあった抵抗をひとつ選んで、"ジャンパ"というものを付けなくてはいけないようだ。 ジャンパという言葉は中学の授業では習わなかったのでよくわからないが、語感から察するに抵抗を0にするということだろう。抵抗の足を切った余りが何本かあったので、これをジャンパとして使うことにした。

LX100の5V電源を基盤の「AC IN」につないで「OUT」にテスターをつなぐ。それぞれの抵抗に順番にジャンパを付けて測定してみるが、どこにつないでも電圧は5Vのまま。半固定抵抗を回しても、いっこうに電圧が下がる気配はない。

電圧を下げるためには、抵抗はふやすのだっけ?へらすのだっけ?
遠い昔に習った記憶をたぐりながら、思いつきで抵抗を介さずにジャンパをつないでみた。すると突然、テスターに低い数値が表示された。半信半疑で半固定抵抗を回すとやがて数値は「3.3」を示した。

3.3V変換器
ヒートシンクの上にある青と白の部品が半固定抵抗。マイナスドライバで回すと抵抗を替えることができる。 見た目はそれらしくできあがったが、果たして役に立つのか?
正直うまくいくとは思っていなかったので、驚きは相当なものであった。 よくわからないが成功してしまったようだ。
3.3V生成のためには、抵抗をはんだ付けする必要などなかったらしい。

まさかこれほどあっけなく変換器が完成するとは思っていなかったので、まだこの基盤をLX100につなぐためのコネクタなどは用意していなかった。再び大須へ出かける。バイブルには既存の線を切ってつなぐ方法が書かれているが、なにぶんど素人なのでオリジナルの電源に手は加えたくない。

必要なのは8x2列のコネクタがついた電源延長ケーブルだが、これを置いている店がまた見つからない。しかたなくDOS/Vショップで10x2列のケーブルを買って、2x2列分を切り取ることにした。
コネクタ 手前の2x2列分を切り取ったコネクタ。
かなり固いのでカッターで完全に切るのは困難。
最後はペンチでひねって折り取った。

基盤の裏側に絶縁テープを貼って、電源ボックスに両面テープで固定する。バイブルにあった通り、ヒートシンクをケース下面に接するように取り付け、放熱効果を高めている。

最後にコネクタをはめ込み、あらかじめオークションで入手しておいたPerforima 5430 からAlchemyボードを抜き取ってLX100に挿入する。ついでに1.6GBのHDDも移植して電源を入れると、LX100独特の「ブォーン」という重厚な起動音が鳴り響いた。
これほどスムーズにことが運ぶなんて、運がよかったとしか言いようがない。
とにかく僕のLX100は603e/160、1.6GBHDDを搭載したPCI Macに生まれ変わったのだった

取り付け例
【2002.2.27】


配線

=+5V =+12V =-12V 黒=GND

配線についての質問があったので読み返してみたのだが、確かに上記の説明だけでは配線の仕方が全くわからない。もう一度マシンを開いて確認してみたところ、配線は左図の通り。右下が電源側、左上がロジック側である。

・電源側上段右端の5V出力は使われていないので、これを変換器の「IN +」につなぐ。「IN −」には、上段右から4番目のGNDをつなぐ。

・変換器の「OUT +」から出力される3.3Vを、もともとはGNDがつながれていたロジック側上段右から4番目の端子につなぐ。「OUT −」は「IN −」と導通しているのでそのまま、何もつながない。


この状態で動いているのでたぶん問題はないと思うのだけど、なにぶん勘に頼って行った作業なので、本当に大丈夫かといわれると自信はない。もしこのページを参考に作業をされる方は、電気的な知識のある人に確認するか、万が一の覚悟を決めた上で実践していただきたい。

【2002.6.25】

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